光と影 上七軒の長屋

上七軒近く、旗竿地の奥に佇む長屋の再生プロジェクト

長らくマンション暮らしをしていたクライアントは、不動産を巡る中でこの町家に出会い、その佇まいに魅了され取得した。
計画では、必要最低限の設備のみを整え、可能な限り既存の姿を残す住まいとすることが求められた。
クライアントは「町家は薄暗いのが魅力」と話し、受け継がれてきた大切な庭の存在も、この住まいの価値の一つとして捉えていた。

また、工事に先立ちクライアントはすでにこの町家で生活を始めており、「月明りで庭が明るい」「広い庭のおかげで風が通る」といった暮らしの情景が共有された。
住んでみて初めて見えてくるこうした感覚を、この町家の物語として設計に取り込んでいる。

田の字型で細かく区切られていた一階の部屋は建具を取り払い、床を落とし、大黒柱を中心とした土間仕上げのダイニングキッチン空間へと再構成した。
再利用した床板や建具を随所に取り入れ、既存の材木と新しい材木が混在する内装とすることで、時間の積層を感じられる空間としている。

二階では床の一部を取り払い、吹抜けを新たに設けた。これにより、元々あった走り庭の吹抜けと上部で繋がり、さらに北側外壁に新たに開口部を設けることで、やわらかな光が一階まで届くようになっている。

この町家に対して強い想いを持つクライアントとともに、古いものをできる限り残し、最小限の手を加えることで現代の暮らしに寄り添う住まいへと整えた。
こうした改修の積み重ねが、古き良き町家をこれからも受け継いでいく一つの方法になると考えている。
所在地
京都市上京区
竣工年
2025年
種別
改装
用途
住宅
構造
木造2階建
延床面積
44.85㎡(13.6坪)

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